2011年11月2日水曜日

10月29日

「ほんで、どうしよ。」天ぷらうどんを食べおわった。
「まあ、そう、焦らんと。」ねこさんは、やまかけそばを食べおわって、爪楊枝。

出町柳まできて、展覧会をひとつみて、昼ごはんにした。
ここから神戸へ移動するかどうかで迷うわれわれ。
わたし 「べつに、焦ってはないけど。」
ねこさん「どうやって行くかなあ・・・(iPhoneで検索しながら)
     僕、普段、「乗り継ぎ検索」ってせえへんわ。パソコンやったら、するんやで。
     でも、これの画面をこんなんしたり、すんのがな。」
わたし 「こまかい作業がにがてなんや」
ねこさん「そう。・・・神戸までって、こっから70キロもあんねんて。神戸、行きたい?」
わたし 「いや、どうしても今日行きたいことはないよ。
     今日ねこさん帰って何かしなあかん用事あるんなら、大阪帰ってもいいし。」
ねこさん「もっぺん、さっきのとこ戻って、栗田が来てへんかどうか見にいこ」

展覧会場にもどったが、栗田さんの気配はなく、ぐるっとまわってみたが、やっぱり誰もいなかった。
わたし 「居ない。・・・・あ、カオリちゃん」
芳名帳に、カオリちゃんのなまえを見つけて指差すと、
ねこさんは「ほんまや。ひょっとしたらすぐその辺に居るかもしれんな。電話してみよか」と言い、
「その辺」よりはちょっと遠くにいたっぽいカオリちゃんを呼び戻した。

歩きながら、カオリちゃんと、おしゃべりをたくさんして、いっぱい笑った。
ねこさんはうしろからついてきながら、
「ふたりとも、毛ぇ真っ黒やなあ、染めてんの?」と言い出す。
カオリちゃんとわたしが「染めてないよ」と言うと
「めっちゃ真っ黒やと思て。僕、最近白髪が。」と言うねこさん。
カオリちゃんもわたしも「わたしもあるよ。けっこうある」と言う。

カオリちゃん「白髪って、抜く?染める?」
わたし   「わたし、もう、放置するわ。」

カオリちゃんがめぐる予定だったギャラリーを3つまわった。
すっかり真っ暗で、肌寒い。カオリちゃんもわたしもストールを出してはおる。
打ち合わせがあるといって、地下鉄の駅へむかうカオリちゃんの、ちいさい後ろ姿。


ねこさん「で、どーしょーか。コダマ(ギャラリー)。行く?」
わたし 「行くかどうするかで、飲み物決めようと思ってんでしょ?」
ばんごはんの時間だということで、おこのみやき屋に居るのだ。
ねこさん「そやねん。けど、まー、えっか。」
ということで、瓶ビールである。

ねこさん「みのりちゃんも、マイコちんも、るみも、皆、お母さんなったなあ」
わたし 「そうやなあ。蘭子のとこの子も、もうすぐ2歳かな?
     みんな、えらいなあ」
ねこさん「なあ」
わたし 「ユッコちゃん、ふたりめ産まれたみたい」
ねこさん「産まれたんか!」
わたし 「こないだ、ファッションショウで見かけて。
     しゃべってないけど、お腹がもう、おっきくなかったから、ああ、もう産まれたんやわと思って。
     『展覧会の搬出しないとアカンねん』って言って帰っていったみたい」
ねこさん「そうなんや、産まれたんや、ふたり目。あのひとはもう、ホンマに、すごい!
     ようひとりで産んで、育てて、展覧会もしとったよなあ。」

「うん、すごい。」と、えらくもすごくもなく、おきらくにビールを飲んでいるわたしである。

空いたお皿をさげにきたり、料理の説明をしにきたりする、アルバイトの女の子がとてもういういしい。
ねこさん「高1ぐらい?」
わたし 「うーん」
ねこさん「もう一声?高2?」
わたし 「うん、高2、かな」

木屋町通りを駅に向かう。
ねこさん「さっきの子、じゅうご じゅうろく じゅうしち ぐらいやったら、僕の娘でもおかしくないやんな」
わたし 「はー。 ねこさん じゅうご ひいたら、にじゅうよん、そうやなあ。ねこさん、あんな娘いたら、
     めちゃめちゃ心配しそう。バイトがえりに迎えに行って、嫌がられてそう。」
ねこさん「えー、そんな、心配せえへんよ。バイトきっちりしてる分には心配いらんやろ」
     いますれちがった2人組みたいんなんやったら、心配するけどな。」
わたし 「みてなかったけど、ギャル?」
ねこさん「うん。なんか異性関係だらしなさそうやん」
わたし 「うーん、そうやろうけど、いや、『そうやろうけど』っていうのはひどい、『そうかもしれん』けど、
     それも含めて、あの子らは強いよ?」
ねこさん「それも含めて、か」
わたし 「まあ、ここで心配してても」
ねこさん「しゃーないな」

各駅停車で座って帰った。
ねこさん「まだ8時過ぎやって。」
わたし 「えーっ もう 11時ぐらい、眠い。」
ねこさん「11時ぐらいの、眠さやな。 寝ていい?」
わたし 「いいよ。わたしも寝ていい?」

わたしは眠りには落ちられなかったが、眠気をずっと感じていたし、
電車は寒くなかったし、
お通夜の帰りの、あの時とは、ぜんぜんちがう と思っていた。
「あたたかい」というのはものすごく大事なことだ と思った。

ちょうど、3ヶ月なんだ
ものさしではかったみたいに。

2011年11月1日火曜日

10月28日

午前中、またじんましんの薬をもらいにいく。
帰ると、ものすごい眠気。
こういう眠気はひさびさだった。
たべるものがかわってから、目覚めがまえより良くなってきた気がするのだけど、
今日は、だめだ。
今日は、眠る日にしてしまおうと思って、眠った。

山の中で雨に濡れていたら、さえ子さんに出会った。
濡れた服を脱ぎな といわれる。
そして、さえ子さんが、お茶室のようなところへいれてくれる。
奥の部屋でねかせてくれた。
その部屋には、黒いおおきな、漆ぬりの机がおいてある。
机の端のほうに浅い彫り物がしてあって、
よくみると、それはさえ子さんによく似た天女のすがただった。

目ざめたらさえ子さんがふすまをあけてはいってきた。
わたしが起き上がり「これ、良いね」と机の彫り物を指差すと
さえ子さんは「ええやろ」と少し笑う。
さえ子さんのたててくれたお茶が、とろりとしておいしく、
「ああ おいしい」とおもって、眼を閉じたら、

こちらの世界で目が覚めた。

10月27日

新月だ。

昼間、高速の下をくぐる横断歩道で、
歩道をわたりながら歌をうたっている、若いサラリーマンをみかけた。
元気でいられるひとは、元気じゃない人のことをおもって元気でなくなってしまうより、
なんのきがねもなく元気でいるのがいいな、
と思った。

社長は、したしいひとのおとうさんのお通夜へ行った。
きのうの午後に「新月ってよくひとがなくなるのだよね」と話していたところの訃報だった。

10月26日

出勤途中、「エコ配の榎本くん」の後ろ姿をみた。
大きな荷台がぐーんとカーブして、角をきえていった。
いちにちじゅう、ずーっとああやって走り回ってるのか 榎本くんは
と思った。

アサミちゃんのご注文の品を集荷に来てくれたのも榎本くんだった。
あの日は、「道に迷って遅れました・・・」って言ってたんだっけな。

きょうも榎本くんに集荷に来てもらった。
とっぷり暮れた闇の中から「おつかれさまでーす」という声と榎本くんの自転車があらわれる。
「きょう、昼間にこのへん、走ってなかった?」とたずねたら
「あ、走ってました。あの時はたいへんでした!」と言っていた。

なにがたいへんだったんだろう。。とおもったけど、きかずにおいた。

新月にちかくて、そういうかんじがわんわんと漂っている。

10月25日

夜の学校へ行く前に、来年用のあたらしい手帳を買った。
おとというんと考えたけど、
さらに売り場でまた迷いに迷って、考えに考えて、
いったんコーヒーをのんで休憩してから、
やっと、買った。

色は黒。
まさか、黒をえらぶとはおもっていなかったのだけど、
ひさびさに、黒が魅力的な色にみえた。
夜の湖の色を思い出すからかもしれない。

夜の湖の真っ黒な色をはじめてみたとき、とてもいやなきもちがしたのを覚えている。
鏡みたいで、わたしの気持ちをいくらでもうつしだしてうかびあがらせて、
ほらほらほらほら って言ってくるいやな奴みたいに思えた。

だけど、4週間のあいだ、毎晩その色をみているうちに、
その黒が、かぎりなくやさしい色にみえてきた。
朝の白さも、昼の澄んだ青緑色も、くもりの日の灰水色も、
夕焼けのオレンジも、
そのあとのラベンダー色も、
ぜんぶ含んだ、夜の黒の湖の色、なんだよな、
っておもうようになったので。

学校では、型紙どおりに布を切った。
裏地を切るのは、ものすごくむつかしい。
はさみの刃がすべりにすべって、肩がこった。

10月24日

朝、ベランダの植物に水をやっていて、
「アジアンタムだけがこの環境に適しているんだな」と、しみじみ思った。
今までわかってはいたけど、気づかないふりをしていたような気がする。

たくさんの日差しをもとめる種の植物は、わたしのベランダにはむかない。
わたし自身が、たくさんの日差しをあびると都合がわるいのだから、
わたしににたような植物をおいたほうが理にかなってるんだ、ほんとは。

ところで、この、ことしのアジアンタムの健やかさといったら。
ついに自分の場所をえたとばかりに、いく周りも成長してしまった。
冬に室内にとりこんでも、置き場所にこまってしまいそうなくらいだ。
日陰でこそのびのびできる奴なんだねえ ほんとに と 
霧吹きで水をかけてやりながら思った。

10月23日

来年つかう手帳のことをいちにちじゅう考えていた。
手帳をどうつかうかということを。
なにをかきとめたいのかということを。
なにをのこしたいのかということを。
なにをつなげたいのかということを。

手帳につかう、ペンのことを。
さきがどのくらいのほそさだと、どんな大きさの字がかけるのか、
どんな紙だと裏うつりしてしまうのか、あるいは裏うつりしないのか、
どんな色わけをしたらいいか、どんな色がここちいいか、
インクの種類はどんなものがかきよいか。

かんがえすぎるくらいかんがえて、
今もっている、今年の手帳の空いたページにたくさんテストした。

来年のつかいかた、少しおもいついた。
そのとおりにはいかないかもしれないけど、
かんがえたりためしたりしてみるのは、とてもたのしい作業だった。
手帳って、なんだか、地図とか座標にも似ているかもしれない。
今じぶんが居る場所をおしえてくれるような。

10月22日

掃除機をかけていて、思い出した。
「ハーブ&ドロシー」だ。
思い出せなかった映画のタイトル。
あれは良かった、けど、タイトルが思い出せない と
妹と言いあった、映画のタイトル。

もう、わすれない。

10月21日

わたしの食事はすっかり野菜中心になって、
がんもどきがおいしい。
母がいつも買ってきてくれる、市場のがんもどきが、
おおきくて、具沢山で、格別。

油分がたりなくなりがちなので、きょうは野菜のフライをつくった。
ただ塩こしょうをしただけの蓮根を揚げたのが、びっくりするくらい、おいしい。
両親には、蓮根にミンチを挟んで揚げた。

きょうはいちにち、ゆっくり、ぼんやり、すごした。

10月20日

朝、まだつづくチラシの印刷。
昼間、それを持って、谷口氏の会社まで、おつかいに。
片道25分ほどの徒歩。
警戒しながら歩いたけれど、ほとんどじんましんも出なかった。
空気がすっきりとしたつめたさをふくんでいる。

大阪の街のどまんなか、けっしてきれいだとはいえない筈の空気だけれど、
それでも、澄んでうつくしいと錯覚してしまう。この季節。

龍くんのフォトショップの授業がはじまる時間がせまっているから、
お昼ご飯をたべておかなければと、
会社へ戻る途中にサンドウィッチを買って、
高校生のようにあるきながらたべた。
ミルクティーも飲んだ。

10月19日

夕方、いつものお得意先の谷口氏がやってきた。
チラシにはさみこむ案内状をハトメでとめる作業をみんなで手分けしておこなう。
わたしはまだ終らないチラシの印刷にかかりながら、
別の机で、別の作業を。

机の回りに三角形になって座り、さくさくと作業をすすめる社長や谷口氏。
「誰も、こんな地道な作業でこの案内状作ってるなんて、想像しないですよね」
「こういうの、たのしい」
と言いあう。
おおきい谷口氏が、せなかをまるくしてちょこんと座って、ハトメをかちゃかちゃやっている。

谷口氏「ピーコちゃん、学校にいきはじめたんやって?」
わたし「うん、そうなんです。きのう初めての授業でね。
    生徒が4人だけだったんですけど、みごとに全員バラバラで。
    だいぶん年配の女の人が一人と、20代の若い女の子が一人、
    20代の男の子が一人、それで、わたし、中年。」
谷口氏「中年て。」
わたし「よかったです。わたし以外が全員若い女の子やったらちょっと嫌かも、と思ってたから」

10月18日

26歳で夜間の専門学校に4年間通うときめたとき、
もう、学校というものに通うのはぜったいこれが最後になるはずだと思っていた。
けど、まだ、さきがあったとは。

縫い方を習いに、週に一度、学校に通うことになった。

きょうは最初の授業。
生徒は、たったの4人。
学校というものは、いつでも、とても、緊張する。

工業用のミシンというものにはじめてふれた。
想像していたよりもとてもシンプルにできている。
シンプルで、ちからづよく、丈夫そうな機械。
速度調整のつまみをよくみたら、ウサギマークとカメマークの絵がついている。
ほとんど、剥げかけの。

ウサギマークでふみこんでみたら、気絶しそうな速さだった。
わたしは、カメマークで固定することになりそうだ と思った。

10月17日

きのうのすばらしかったショウの余韻をかんじながら、
しかし仕事はすでにもう、つぎの流れへうつっている。

きょうは、プリンターで出力ざんまい。
チラシを300枚印刷しなくちゃならない。
出力をしながら、ほかのだんどりをかんがえる。

わら半紙をプリンターにならべる。
なつかしい。小学生のころ、テストの用紙はこんなわら半紙だった。
足りない枚数をシモジマで買い足したら、
色がちがう。

わたし「あたらしいわら半紙、こんなに色がちがう。」
社長 「うん、こっちの古いわら半紙、ねこさんが置いていったやつやからなー 
    残ってたやつ、勝手に使ってんねん 笑」
わたし「ってことは、5年ぐらい、置いてあったのか 笑」
社長 「それで、いいぐあいに黄ばんだんやわ。」
わたし「その色のは売ってないわけだわ。笑」

うちの事務所は、5年ほど前まではねこさんの会社のあった場所なので、
そのころからおいてあるものが、ちょこちょことある。

うちの会社の名前も、ねこさんがつけたらしい。
うちに来るお客さんはかならず、
「あの、へんなこときいていいですか。なんでそんな名前なんですか」という。
社長はいつも、
「ああ、皆さんそうきかれるんですけど、意味は、無いんです。」と答えている。

10月16日

大学の先輩である濱田さんのつくるお洋服のショウをみに、京都へむかった。
今日の日を、ほんとうにたのしみにしていた。

ものをつくるひと、
誠実に、つくることの苦楽とともにくらしてものをつくるひとの仕事をみることほど、
こころの栄養や勇気になるものは、なかなか、ないなあとおもう。

ファッションショウをみるのははじめてだったけど、
こんなに観に行きたかったのはきっと、
洋服を観たかっただけじゃなくて、
濱田さんがそれをどんなふうにみせてくれるのか、
どんなモデルさんをえらんで、どんな調べにのせて、どんなうごきで。
それをすみずみまで味わってみたかったからだ。

秋のはじめの風がふくなかで、
西日がおだやかに照らす庭にならべられた、
白い椅子にすわって待っていた。

ひびくリズムのなかで、とてもとてもゆっくりとあるくモデルさんたちが最初に着ていたのは、
真っ白な服だった。
止まりかけの時間だった。
ときどき吹く風が、透ける生地をもちあげて、時間がうごいているのがわかった。

白いなかに、ひとすじずつ、色があらわれてきて、
もっともっとたくさん、色がうかびあがってきて、
色と光がいっしょになったみたいな、光を着ているみたいな、きれいなひとたちが、
おごそかに、あらわれて、去っていく。
瞬間をぜんぶ、見逃したくないから、息がとまりそうだ。

終わってから、お友達と話していても、まだなんとなくこっちの世界にもどってこられない。
そしてそのまま、夜になった。

10月15日

昨晩龍くんがもちかえって徹夜で仕上げてくれた画像を
朝、スカイプでうけとり、
これまたよくわからないまま、つまづきながら、アップ作業をして、
ついに、彼女のたましいのこもったあのタイツたちが、
インターネットの海にでていった。

わたし「あああ〜 で〜きた〜ぁ」
社長 「やったね〜!」
社長と龍くんのおかげ。

こういうことをしようって、最初に話がでたのは、いつだったっけ?
あれからなんども社長と彼女とわたしの3人で話し合って、
そのあと、彼女とわたしのふたりでなんども打ち合わせをして、
やっと、かたちになった。
はぁ、できるんだな、こんなことが。
誰でもやっていることだから、はたからみるとどうってことないんだろうけど、
ひとのみえないところで、これだけいろいろなことがうごいていたんだな。

なんてことを思いつつ、すこし感動はよこにおいて、まだ直さないといけないところをリストアップしていた。

10月14日

きのう修正した画像を、社長のつかっているモニターでみてみたら、
ものすごく黄ばんで見えた。

昨日、何もわからない状態で必死に色を調整して、
じぶんのモニターではそれなりの色にみえるようになったのだけれど、
「あれだけいじくったあとで、これだけちがう色になってしまっているなら、
ここからどうしたらいいのだろう」
わたしは一気に途方にくれてしまった。

龍くんも来てくれて、もういちど、社長のモニターでみながら、いちからやり直すことになった。
とても繊細で微妙な色使い、キラキラ光るラメの質感、カラフルだけど渋みのある柄。
どこまで忠実に出せるか。出したい。

「この感じを、だしたい。」
「ここの色が、気になる」
というと、龍くんはいろいろな方法をおしえてくれる。
だけどもう、理解がおいつかなくなってきた夕方。
わたし「ああ〜!もう、なにがなんだか、わからなくなってきました。」
龍くん「ちょっと、替わろか。」
わたし「すみません。おねがいします。」

夜もふけてきて。
龍くん「あっもう、くっそ〜!この柄、廃盤にしようぜ!」
社長 「あたし、やろっか〜?」
わたし「社長、今日のしごと、終ったの?」
社長 「うん、もうすぐ終わる〜」
わたし「すみません。おねがいします。」

終盤、わたしにできる仕事といったら、ふたりの肩を揉むことぐらいだった。
社長の肩はとても揉み易く、揉んでいて、てごたえがあった。
ほぐれていくのがわかるので、揉んでいてうれしくたのしい。
龍くんの肩はぐいぐい力を入れても揉みこめず、
龍くんはときどき「こそばいな」と言っていた。

10月13日

龍くんに先生になってもらって、フォトショップの勉強をはじめている。
まだ、あつかいかたがちっともわからない。

だがしかし、見よう見まねで、きのう撮った写真の色修正をはじめた。
とにかく、これをやらないことには、仕事の目標が果たせないので、
どんなにわけがわからなかろうと、やるのである。。。

「ピーコ、カメラの扱いも、おぼえる?」ときかれて、
「おぼえたい!」と一瞬で答えていた。
おぼえたいという欲だけは、ちゃんと、あるのである。あはは。

10月12日

事務所で半日かけて、タイツ7足の撮影をした。
どんなふうにみせるか、どんなカットをどう撮るか考えて、
龍くんに来てもらい、あたらしいカメラで、撮ってもらった。
タイツの履き口に入っている柄を見せるカットをどう撮るか、最後まで悩んだ。

龍くんはわたしが悩んでいる間も、そとでたばこを吸いながら辛抱強く待ってくれて、
終止冷静におだやかに、シャッターをきりつづけてくれた。
かたわらに冷静でおだやかな心のひとがいるというのは、
それだけでおおきな支えになる。

しごとでこういうふうにものを撮影するのは初めてのことだった。

夜、社長と龍くんと3人でごはんを食べにいった。
龍くんに「もっと喰え!その体脂肪率ではスタミナ無いやろ?」といわれる。
「うん、無い」と言ってたくさんたべた。
並んでにこにこ見守ってくれているみたいな、社長と龍くんである。
満月だった。

10月11日

病院で、お医者に、きもちわるい写真をみせた。
お医者は「ふふーん。赤くなって、鱗状に膨張する感じやね。」と言って、
わたしの舌と脈をみたあと、本を開いてしばらくずーっと何かをしらべ、
「ふーっ」とひといきついて考えて、
また本をひらいて、

「薬、ちょっと変えてみるわ。前と似たような・・・とは、言わへんけど」
と言った。

わたしは
「あの、質問しても良いですか。おへその横辺りが、押さえると違和感があって少し痛いのはどうしてですか」
ときいた。
お医者は
「血流がとどこおってるんやね。お腹や骨盤のそのあたりというのは、静脈がたくさん通ってるところだから、」
とおしえてくれた。
わたしは、
お医者にじぶんでちゃんと質問したこと、いままでなかったな、
お医者なんてしょせん、、なんて思ってしまってたところが、わたしのなかにあったよな、
と思った。

「ほんで、お薬は、こもってる熱をとっていくようなのに、します。
熱というか、気の流れというか。熱をいれる、出す、ということをね。」

「熱をいれる・こもってる熱を出す・気・血・流れ・血流・・・・」
と、いろいろなイメージをぐるぐるさせながら、電車に乗って帰った。